不登校の原因
不登校にはいくつもの原因があります。このホームページをご覧の親御さまなら、ここで紹介しなくても色々な書物をお読みになったり、カウンセリングを受けたりと、ご存知かと思いますが、不登校専門のカウンセリング歴15年実績と経験から、基本的には色々な著書と同じでも、私の経験から得た視点でお話ししてみたいと思います。
まず○起立性調節障害からくるもの、○思春期症候群からくるもの、○イジメからくるもの、○人間関係・学校環境からくるもの、○発達障害・学習障害からくるもの、があり、基本的にこの五つが大きな原因と言ってよいでしょう。
特に一番大きな原因となるものは起立性調節障害です。朝起きると頭痛、めまい、吐き気、腹痛、頻尿などの症状を訴え、お医者様へ行くとお子様の多くは起立性調節障害または自律神経失調症と診断されます。次に上げるとすれば思春期症候群です。無気力、睡眠リズム障害、思春期ブルー、慢性疲労症候群、などなどなど、ともに不登校の大きな要因と言われています。
実はそれらの症状を引き起こすものがあります。なんと成長ホルモンがそれなんです。
子供の成長には欠かせない成長ホルモンですが、とくに成長が著しい10才から16才前後の思春期には、自律神経に大きな影響をもたらします。自律神経には色々なスイッチがあります。頭痛、めまい、腹痛、吐き気、頻尿、低血圧、過敏性腸炎、その他いろいろあり、ひとつのスイッチもあれば、3つやいくつも同時に入るお子様もいます。
また心にも大きな影響をもたらします。意味もなくイライラしたり、ムカムカしたり、腹が立ったりします。お母さんに暴言を吐いたりします。
そしてブルーになる子もいます。自分の人生を悪く考えたり、生きている意味を考えたり、自殺を考えたり、リストカットのまねごとをしたりします。人間そのものの存在を否定したりします。そうすると無気力、無感動になったりします。思春期症候群、思春期ブルーがこれにあたります。中には思春期鬱へと陥るお子様もいます。
思春期外来のお医者さんが「子供の更年期障害」と言われたりします。まさに言い得て妙です。
ホルモンが成長にあわせて過剰になるために心のバランスが歪んでくるのです。
起立性調節障害は、小・中学生の10%と言われていますが、しかし、頭痛、めまい、腹痛、吐き気などなどは、なんとお子様の60%位が、多かれ少なかれ、経験しているというデータがあります。
でもでもです、60%のお子様がすべて不登校になる訳ではありません。
多くのお子様は、多少気分が悪くても、頭が痛くても、おなかが痛くても、イライラしていても、学校に通っているのです。
なぜなら、起きてからだいたい1時間~2時間以内におさまります。
学校へ行って朝友達と遊ぶだけで、コロッと治まっているのです。
頭痛、吐き気、めまい、腹痛などは、すぐに治ると理解しているから、学校に行けているのです。
気分が悪くてもお父さんが恐いから行くと言う子もいます。(その子達も学校に着く頃にはコロッと治っています)
不登校のきっかけとなる親の行動
ここからが問題です。
休むきっかけとなる子がいます。起立性調節障害のお子様が、学校が休めるのがわかるとすぐに症状が治まるのを見て“お母さんが、仮病では?”と思うのは、このケースでもあります。
不登校へとスムースに?進むよくあるケースをご紹介したいと思います。
たとえば頭が痛いと休みだして、まる2週間くらい続けたとすると、症状が治まっていたとしても今度は学校へ行きづらくなります。1ヶ月も続くと、お子様は学校へ行くのが恐くなってきます。「友達から何言われるかわからへん」「友達の視線が恐い」と思うのです。
このケースではさらにこんなケースもあります。お母さんは心配して「学校で何があったの」と聞くと、それこそ色々と言います。言い訳をします。友達のこと、友達からされたこと、友達からからかわれたこと、友達とのいさかいなどなど、本人はさほど思っていなくても、親に聞かれたことを幸いとして、学校の行かない理由を友達や先生のせいにします。
お母さんの多くは、子供の言ったことをまるまる信用して「先生の所に言いにいきます」。それを知ったお子さんが「何で、先生にそんなこと言うの」と文句を言うと、「あんたが学校に行かない理由がわかったのに、あんたが苦しんでるのに、なんで言いにいったらあかんの」とお母さんは反対に言い返します。
お子様はそんなつもりではなかったのに・・・ますますお子様は行きづらくさせてしまいます。
またカウンセラーやスクールカウンセラーにも、行けない理由をお母さんに言った同じ内容の事柄を言うお子様もいます。ベテランのカウンセラーさんや心療内科の先生は、きっかけの小さな理由にはなったかも知れないけれど、原因は思春期独特のものとわかっています。ところが経験の少ないスクールカウンセラーさんは、行けない理由をまともにとらえ、相手の子供に謝らせるように指導するケースもあります。もちろん担任の先生が判断して謝らせるケースもあります。
謝れと言われたお子さんは、たぶん「えっ、なぜ・・・」と思うケースが多いのです。
気軽な気持ちで言っただけなのに、これでは問題が大きくなり、不登校のお子様はますます後に引けなくなってしまうのです。
それが不登校を長引かす、大きな原因にもなります。
私の経験から、これが意外と多いです。
※もちろん悪質なイジメ、暴力などは学校や教育委員会への対応が必要なのはいうまでもありません。
もうひとつ長期の不登校は、厄介なケース
朝、準備をし、さぁ、学校へ行こうとすると、“学校へ行くと不安”と言う気持ちから、頭痛、吐き気、めまいなどの身体反応を引き起こすお子様がいます。
学校が休みの土曜日、日曜日は元気なのに、月曜日になると調子が悪くなるのがこのケースです。
学校が長期休みの夏休み、冬休み、春休み、その休み期間中は、とても元気なのに、学校が始まるととたん調子が悪くなるのです。
行こうと決意しても、身体が拒否してしまうのです。まさに休み続けると、さまざまな悪循環に陥りやすいと言えるでしょう。
起立性調節障害に近い症状と言ってもよいかもしれませんが、線引きはむつかしいと考えます。
催眠による暗示療法
今まで多くのお子様には、調子が悪いけれど、がんばって行くお子様がいます。その多くのお子様は、それをきっかけに復学するケースが多いです。
思春期症候群、思春期ブルーの問題
起立性調節障害と重なる部分はありますが、ここでは分けて見てみたいと思います。
早いお子様で10才くらいから思春期症候群が始まります。無気力、朝起きない、憂鬱そうなまなざし、親への反抗、不定愁訴などなど、中には、意味もなくイライラやざわつき感、腹立たしさや、持って行き場のない憤りに満ちている子もいます。
もう一つ思春期ブルーがあります。自分は不要な人間と思ったり、人間生きている意味を考えたり、生まれて来なければと思ったり、自殺を考えたり、リストカットのまねごとをしたりします。人間そのものの存在を否定したりします。そうすると無気力症候群や燃え尽き症候群になったり、中には思春期鬱へと移行する子もいたりします。
当然悩みの度合いが、軽い子と深い子がいます。深い場合は真剣に悩み、同じような悩みを持つ子とグループを組んだり、インターネットで交流する子もいます。
このような場合は、カウンセラー対応をお勧めします。
とくに思春期ブルーで自殺願望が多かれ少なかれ身受けられる場合、あるいはリストカットの傷跡を見た場合は、早めの対応をお願いします。
不登校のタイプ
タイプ1 母子分離不安型
特徴
- 小学校低学年に多いタイプである。
- 妹や弟が親の手から離れると、急に症状を出す子もいる。
- 母親の心を自分に向けるために、母親の喜ぶことや、又はいやがることをする。
- 母親がいなくなることに不安を持つ。母親の携帯にしょっちゅう電話する。
- 母親の膝に乗ってくる、引っつくなど、赤ちゃん返りを見せる。
- 母親がそばにいると、心が落ち着く。
留意点
- 母親から離れることの不安を無視しない。
- 母親の関心を引こうとする行為をしかったりしない。
- 子どもに幼さを感じたとしても、拒絶しない。
- 年上の兄弟がいる場合、兄弟にしっかりと説明した方が良い。
- 年下の兄弟がいる場合、難しいですが、できるだけ平等に愛してあげる。
タイプ2 過保護型
特徴
- 過保護で育ってきたお子様に多い。気が弱く、心がやさしい。
- 引っ込み思案で、自分から積極的に動こうとはしない。
- 自分より強い子には、苦手、近づこうともしない。
- 可愛い可愛いで育ってきたため、協調性が低く、集まって遊ぶことも苦手。免疫性がない。
- 怒られて育ってきた経験が少ないため、先生や友達の怒った声に恐怖を感じやすい。
留意点
- いじめの対象になりやすいため日常の態度変化に注意。
- 純粋培養型で育ってきたため、色々な友達や社会との接点を作る。
- 友達ができにくいタイプ、クラブや催しの参加を促す。
- クラスでも浮いた生徒になりやすい、理解のあるクラスの子や先生のサポートが大事。
- 同じ趣味の子と一緒に遊べるよう、参加しやすい環境を作って上げる。
- プライドは高いためプライドをつぶす言動はしない。
タイプ3 燃え尽き型
特徴
- 受験勉強やスポーツでがんばってきたタイプが多い。
- 新入学年の5月になりやすい。五月病。
- 今まで親や先生の期待に応えようとしてきた。
- 今まで一番だったのが、より優秀な人間がいることに自信を失う。
- 性格的には真面目で几帳面かつ神経質。
- 不登校になる前は休むことはほとんどなかった。
- 学校を休むことに罪悪感を持つ。
- 休みだすとゲームにのめり込みやすい。
- 家にひきこもりがちである。
留意点
- 休むことで心にエネルギーをためさせる。
- 励ましたりすることは反対に逆効果になる。
- 時々学校の先生に来てもらい、接点を切らさない。
- エネルギーがたまると復学意欲を見せるが無理矢理は避ける。
タイプ4 甘え・逃避型
特徴
- 友達や学校での些細なトラブルがきっかけで不登校に。
- 何事にもやる気がなく、無気力。
- イヤなことからすぐ回避する傾向が強い。
- 何かを最後までやり遂げた経験がない。親もそれを許してきた。
- 起床から睡眠まで生活リズムが乱れがちである。
- イヤなことに対して身体症状が現れることがある。
- プライドが高く、自分が傷つきことをおそれる。
留意点
- 本人を認めてやりながら自主性・自発性を育てる取組みが大切。
- イヤのことから逃げるタイプのため、見守るのみの対応をは長期化のおそれ。
- やる気が見えてきたら、段階的に課題を与える。
- 本人の興味や関心あるものの体験をさせる。
タイプ5 明るい不登校型
特徴
- 本人を認めてやりながら自主性・自発性を育てる取組みが大切。
- 不登校に対する罪悪感が小さい。いつでも戻れる気持ちもある。
- 先生や友達が迎えに来ると登校する場合もあるが長続きしない。
- 吐き気、めまい、頭痛など心因性の身体症状は少ない。元気である。
- 遠足、運動会、文化祭など楽しい行事のある時は登校するが、後は行かない。
- 趣味や特技など、自分のやりたいことには、外出する。
- 塾や家での勉強など自ら積極的に取り組もうとする意欲に乏しい。
- カウンセラーに対しても雄弁であるが、今後はわからないと言う。
- インターネットやゲームなど、自分の好きなことをして過ごす。
留意点
- 家でも外でもよく話す。話しは聞いてあげる。
- 見守るのみの対応は不登校を長引かせる場合がある。
- 将来への不安感があることが多く、気づきを持たせることが大切。
- 先生の家庭訪問が大事。見捨てられていないと感じる子が多い。
- 友達との会話やつながりメールで、友達との接点を持たせる。
タイプ6 人間関係型
特徴
- いじめ、友達間のトラブル、人間関係が問題となって登校できない。
- 先生の心ない言葉、感情にまかせ全員の前で恥をかかすような言葉を投げる。
- 登校意思はあるが、自分なりの解決策が見いださないため登校できない。
- ストレスにより体調を崩し、頭痛や腹痛などの身体症状を訴える場合がある。
留意点
- 早期対応が早期解決の鍵となることが多い。
- 事情が分かればすぐに解決を図っていくことが必要である。
- いじめは無理に聞き出すと心がさらに傷つく可能性があるので、注意が必要。
- 陰湿・悪質ないじめの場合は、教育委員会、弁護士に相談する。
- 不登校を他人のせいにする傾向もあり、どの程度なのかどうかよく見極めることが大事。
- 小さな問題を親が大きくしてしまうと、問題が解決しても登校できくなる可能性がある。
タイプ7 思春期神経症状型
特徴
- 主観的なこだわりをもっている。自分の内的な世界にこもる。
- 意味もなくイライラ、意味もなく腹が立ったりなど強迫性の神経症状を出す。
- 頭痛、腹痛、吐き気、発熱等の身体症状や強迫性の神経症状を出す。
- ブルーになり、生きる意味を考えたり自分の人生に対して虚無感を持つ子も。
- 自傷行為を繰り返したりする。
留意点
- 不登校を起因とする感じ方、見方、考え方などが、子供により違う。カウンセリングが必要。
- 内的なストレス反応であり、不安感を和らげてやることが大切である。
- 子どもにより症状が違うが背景には家庭生活や対人関係での葛藤をうまく処理できないことがある。
- 自我の確立が十分できていないことなどによる心理的要因がある。
- うつなど精神疾患が疑われる場合、できるだけ早く信頼できる医療機関を受診する。
- 本人が外出できない場合は親だけでも医療機関や相談機関にて、対応を相談する。
タイプ8 学校嫌い型
特徴
- 勉強が苦手かつ嫌いなため学校も嫌いになる、だんだん授業に出なくなる。
- いったん家を出るが、公園や映画館などで時間をつぶす。
- 学校へ行きたくないし行かない気持ちが強い
- 同じような行かない友達や先輩と、いっしょに遊ぶ子もいる。
- 中学生、高校生に見られるようになってくる。
- 高校の場合中退した友達の影響を受けやすい。高校中退する子に多い。
留意点
- 説得、説教は逆効果になりやすい。カウンセラーと交えて話すことも良い。
- 反社会的な思想や団体に影響を受ける子もいる。放課後の行動にも注意が必要。
- 親や学校、社会への反発がかっこいい生き方ととらえる子もいる。
- 自分のために今必要なことは何かを気づかせる。
- スポーツや特技など好き分野があるなら、それを伸ばすにはどうすれば良いかをいっしょに考える。
タイプ9 発達障害・学習障害を伴う型
特徴
- 理解することに時間がかかる子もいる。
- じっとしている子が苦手、授業中、動き回る子もいる。
- 不得意な教科は抵抗感を強く持ち、教室でじっとしていないときがある。
- 教室に入らず、入口付近でうずくまる子もいる。
- 教室でコミュニケーションが取れず、孤立したりする。
- 自分に合う活動には、喜んで参加するが、それ以外は消極的。
- 先生の言葉にうまく処理できず、パニックを起こすことがある。
- 社会的、情緒的に未成熟であるため、不適応を起こしやすい。
留意点
- 問題が起こった際、納得できるように相手の気持ちや状況の説明をくりかえし行う。
- 得意なことや、意欲や興味に合わせた活動に取り組み、本人の自信を育てる。
- 学習については、本人の感覚や理解の仕方に添って、教え方を変える必要がある。
- 場合によっては指導実績のある個別指導の塾、フリースクールなども検討する。
- 子どもの特長を生かし、足りないところは育てることを目標にしていく。
- 子どもの行動や言葉に不審を感じた場合、小児科・教育委員会などに障害検査の相談を。