OCMC

Osaka Child Mind Center

社団法人 大阪市こども心理センター

日本で唯一こども専門の催眠療法室併設

42歳の引きこもりの息子に母親はまるで幼児の扱い

2019-10-09  ひきこもり

30才前から引きこもる息子に、何も言わず、何もさせず。

十数年前の話しですので、もう時効かと思います。
引きこもりの相談に老齢の女性が来所されました。来所されたらまず質問シートの項目に色々書いていただきます。
そこでひきこもりの息子さんは42歳で、15年も引きこもっていることがわかりました。
小学生時代にイジメを受け、5年生頃から不登校に。中学時代もほとんど不登校で、高校は出来たばかりの通信制に入学したとのこと。
ここでは不登校せず卒業、高校卒業後はゲーム関係の専門学校に入学し、ここでも休むことなく卒業した。しかし卒業後2〜3年は働かなかったとのこと。
しばらくしてゲーム会社に就職するもどこも長続きせず30歳前から、現在まで約15年ひきこもり状態とのこと。

息子さんの今までの様子を聞くと、大人しく無口で優しいとのこと。暴言や暴れることもいっさいなかったとのこと。
勉強は高校時代は常にトップクラスで、有名私大や国立大学へ合格するも、専門学校を選択。当時、人気のあったテレビゲームを自分の手で
作りたいとの希望を優先。子どものやりたいことが一番と思い、国立大学を入学を薦めた教師や父親の反対を押し切る。
引きこもり後は、家で何もせず、ひたすらネットを見ているとのこと。母親との会話はあるが父親とは全くないとのこと。
父親が何を言っても無反応を決め込んでいたため、ついに父親は何も話さなくなったという。
お母さんに「息子さんと今後のことは話し合いましたか」との問いに「いいえ、あちこちの相談所に行きましたが、本人もよく自覚しているので、
このままではいけないと気づくまで、見ていましょう」といわれたとのこと。だから働くこととか、今後どうするかとかの話しはまったくしていないとのことでした。
主人は引きこもりはじめた当初、しかったりしていました。そのたびに息子は「そんなことよくわかっている」と母親には言っていた。
だからカウンセラーの気づくまで待ちましょうを母親なりに決めていたと語ります。

息子への接し方はまるで5歳児のよう。子離れが今だに出来ていない母親が。

息子さんの今までの様子を聞くと、大人しく無口で優しいとのこと。暴言や暴れることもいっさいなかったとのこと。
ただ上から目線で話す癖があり、父親はやめるよう言っても治らず、だから友達はあまりいなかったらしい。

母親が来所してから約1週間後、息子さんと一緒に来所される。顔色も白く、身体も細く、元気もなく、という感じです。
風邪気味なのか、鼻をクスンとすると母親がバッグから紙を出す。鼻をかんだ紙をお母さんがしまう。
彼の略歴を入力しているとさらにバッグからペットボトルのお茶を出し飲ませる。
「ちゃんと先生に話しなさいよ」とやさしく声をかけるなどなど、その様子を拝見しているとまるで幼児の接し方そのもの。
母親の子離れも息子の親離れも全然出来ていないのを、すごく感じ取ることが出来ました。
息子さんと二人だけの面談タイムに入る時も「この子は人と話すのが苦手ですので・・・」とひと言話される。

会社で働くのは自分には合わない。でもどうしてよいかわからない。

話しをしてみるとなかなか頭が良いのがわかります。自分の置かれている状況も、今後のことも彼なりに理解しています。
彼曰く「自分はコミュニケーション障害があると思う」。

小学校から自分が何を言うと皆から反対される、何かするとつぶされる、こずかれる、ちょっとしたことでもやりだまに上げられると語る。今だに小学校のことを思い出すと
イジメや人間を許すことは出来ないと語る。こうして思い出すと今夜は眠れないと言う。
働かないことに関しては「性格的に無理」という。じゃー自分で何かをしてみたらと言うと「何をしたら良いかわからないし思いもつかない。何が自分に合っているか、それさえも見分けられない」「お父さんは何か言う」「言わない。言っても無理と思っている」「以前は何か言ってくれた」「何か自分でできる資格を取ったらとは言っていた」「どんな?」「鍼灸師とか、マッサージとか。全然興味がないしやる気もない」「でもお父さんは心配して言ってくれたんだ」「はい」

催眠で未来生療法を施療すると・・・

そこで催眠を提案するとやってみたいとのこと。
もし大学に行っていればとの未来を見てみると何と「医者になっています。それも心療内科の病院を経営しています」と言って、急に号泣。
彼は医学部に合格していたと語る。当時はやはりゲームに興味がありゲームを作りたい気持ちが強く念願のゲーム会社に働くも、どこも小さな会社で
徹夜徹夜の連続で、正社員になれずパートの延長のような扱い、かつ「まさにブラック企業で、残業もつかず、納期に追われる日々」とのこと。
「いまさら後悔しても始まらないですね。オヤジの言うことを聞いていれば良かった」
「そう、でもまだ42歳、これからの未来を見てみよう」と5年後の自分を見てみると「あ〜、白衣着ています。医者じゃないようです。あっ鍼を打っています。
鍼灸師をしています」「どう元気そうですか」「元気ですね。患者さんも多そうです」「どう、良かったですか?」「はい、参考になりました。催眠ってすごいですね。それにやらなければという自覚みたいなものがでてきましたね。先生のおかげです。ありがとうございました」

施療後、お母さんと話されていました。とてもうれしそうでした。私からお母さんに対しては、結局何もアドバイスはしませんでした。息子さんは42歳です。息子さんは催眠の結果からきっと自ら動き出すと確信しましたので、お母さんにアドバイスをして変に受け止められるかもしれないと思ったのです。

当時のカルテから息子さんの名前をインターネットで検索すると、針灸師としての名前が出ていました。催眠療法は役に立つとさらに確信を得ました。
良かったと思います。